海外の医療ニュースから その2 ~抗生物質の善と悪~

このシリーズは別のサイトに投稿していた物ですが、そのサイトが分け合って1年足らずで終了してしまい、せっかく書いたのに切ないのでこちらのブログに移動することにしました。

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先日、大村智名誉教授のノーベル賞受賞のニュースが日本中を駆け巡りました。大村氏の功績は数々の抗生物質の発見です。一躍話題となったが「イベルメクチン」と名付けられた家畜の寄生虫を駆除する抗生物質です。これにより何千万人もの人々が救われたと言われています。

一方では今年3月にマクドナルドが抗生物質を餌として与えられた鶏肉の使用を中止することを発表しました。このような動きはマクドナルド以外の食品業界大手企業にもみられるトレンドのようです。

果たして抗生物質とは「善」なのでしょうか?それとも「悪」なのでしょうか?

抗生物質を乱用すれば抗生物質が効かない菌(耐性菌)が増えてしまう可能性がある。また抗生物質は有害細菌だけではなく、いわゆる善玉菌まで殺してしまう。結果として本来備わっている免疫力を弱めてしまう恐れがある。

正しい使い方をすれば救世主となりえるし、間違えば更なる悪魔を生み出してしまう可能性がある代物。最近ではイベルメクチンに耐性を持った菌も出てきているそうです。

特に問題視されているのは家畜の病気に対してではなく生産性を上げるための抗生物質の乱用です。生産性を上げるための抗生物質のメリットの一つは成長促進剤としての利用で、もう一つは狭い場所で多くの家畜を育てる事により起こりうる病気の予防としての利用です。こういった抗生物質の「悪」の部分を減らすために表向きには大手企業がこぞって動き出しているように見えます。

そんな中、とあるアメリカの消費者団体によりファストフードに使用される肉類の抗生物質使用の程度についてのランキングが今年9月に発表されていたのでご紹介します。ただしこのランキングは実際にそれぞれの商品を検査した化学的データに基づくものではなく、現在の使用状況やポリシーなどを調査した結果によるもののようなのでデータの信憑性は定かではありません。

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細かい説明は省かせて頂きますがこの表の右端にある”Grade”欄を見て頂けると、日本に進出している企業のほとんどがCランク以下の低い評価である事が解ります。ファストフード店を良く利用される方は知らず知らずの内に抗生物質を体内に取り入れているかもしれません。

また、抗生物質は肉だけではなく海産物や、農薬として農作物にも使われています。現代社会では抗生物質を完全に避けて生きて行くのは難しそうです。抗生物質=「悪」ではありませんので、個人的にはやけになって避ける必要も無いかと思いますが、口にするものに何が含まれているのか一消費者として少し気にかけてみてはいかがでしょうか。抗生物質乱用による耐性菌という「悪魔」をこれ以上増やさないためには、企業側の努力がもちろん必要不可欠ではありますが、消費者側の選ぶ目も大切だと思います。

参考資料:

抗生物質の汎用と抗生物質不使用食品の展望 深澤 茂樹 ・ 深澤 巨樹

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